OSS活用とRFP

ホーム>OSS活用とRFP

SI Forum OSS活用とRFP

「OSS活用とRFP」は、LinuxをはじめとするOSSを業務システムに活用するにあたっての課題を顧客視点およびSIerの視点で分析したものです。この分析結果を整理し、実際に役立つコンテンツとしての提供を意図してRFP(Request For Proposal、提案依頼書)作成時の手引きとなることをめざしました。
この手引きを活用することにより、ユーザー主導のOSS採用がさらに促進できるようになれば幸いです。

    目次

  1. はじめに
  2. システムの概要
  3. 保守条件について
  4. トピック1 )OSSは知的財産権の問題がある?
  5. トピック2 )OSSを使うと、すべてのソースコードをOSS化しないといけない?

 

はじめに

近年、オープンソースソフトウェア(以下、OSS)は、メデイアでも取り上げられることが多くなり、ビジネスにも利用される機会が増えてきています。また、企業内でのミッションクリティカルな業務エリアへもLinuxなどのOSSが採用され始め、OSSがビジネスにも十分利用できることが多くの事例から実証されてきています。

OSSの利点としては、ビジネスで利用可能な点も特徴としてあげられますが、もう一つの側面としては、先進技術や国際標準への取り組みが早いので、その先進技術の成果をいち早く享受できる点も挙げられます。

政府や自治体でも、情報システムのコスト削減策としてOSSによる開発費やライセンス費用の削減に取り組むところが増えています。
最近のトピックとしては、中央省庁内の情報システムにLinuxなど設計情報を公開しているソフトウェアの採用を促す調達指針を出すという報道や、OSSによるコスト削減に加えて分割発注により地元の中小ベンダに活用した地方自治体も出てきています。さらに開発したアプリケーションをOSS化してシステム基盤を自治体間で共有することで、開発・運用のコストをさらに削減しようという動きもあり、OSSはもはや無視できない存在となってきています。
また、経済産業省、総務省、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の支援のもとで、ユーザー、ベンダ、学識経験者により構成された日本OSS推進フォーラムが、日本国内に加えて中国・韓国の各団体と連携してOSSの普及を推進しています。

このような状況に対して、業務システムにおけるOSSやその代表的な存在であるLinuxの適用拡大を目指し、システム構築の見地による「適用上の課題」を顧客視点およびSIerの視点で分析し、ユーザーによるRFP(Request For Proposal, 提案依頼書)作成時の手引きとなる資料を意図して、この「OSS活用とRFP」をまとめました。RFPに着目したのは、RFPがシステム構築の初期段階でユーザー主導により作成されるものであり、この時点からOSS適用を考慮することが、OSSのメリットを生かしたシステム構築につながると考えたことからです。作成作業における分析の結果、一般的なRFPに含まれる項目の中でOSSに関わるものとして「システムの概要」と「保守条件」の2点に絞って取り上げました。また、知的財産権の問題やライセンスについては、トピックスとして紹介します。
この手引きを活用することにより、ユーザー主導のOSS採用がさらに促進されれば幸いです。

尚、RFP自体のあり方や書き方については、世に多くの専門書籍や情報があるため、この手引きの中では割愛しました。
参考:特定非営利活動法人 日本ITコーディネータ協会 「RFP・SLAドキュメント見本提供について」
http://www.itc.or.jp/index.html

トップに戻る

システムの概要

システムの概要は、RFPにおいて、システムの提案をベンダに依頼する目的や背景を総括的に示す部分と位置づけられ、後の詳細な要件の提示の前提となる重要な部分です。ここでは、技術面について詳細に触れないのが一般的ですが、システム構築の目的にOSSのメリットを意識した内容も盛り込むことで、SIベンダによりOSSの適用可能性も考慮された提案がなされ、幅広い選択肢の中から最適な提案を選定できると考えます。

OSSは全世界の多くの個人および組織によって開発され、ソースコードが公開され、誰でもが無償で使えるものです。このため、複数ベンダが提供可能なソリューションのインフラとして急速に普及し、いわゆるコモディティとなっています。(コモディティの例:UNIXサーバーと比べた場合、数十倍の出荷台数を持つPCとの部品共通化による圧倒的なコストメリットを持つLinuxベースのPCサーバーはコモディティ化しているといえます。)
このような環境にあるOSSの利点として、後に解説する経済性、オープンスタンダード(ベンダ非依存)、信頼性の3点を挙げ、メリットを享受できるように促す事が重要であると考えます。たとえば、利用が必須となるアプリケーションがある場合は、RFPにその旨を明記すべきですが、必要な機能レベルの記述に抑えた場合には、多様な選択肢を得られる可能性が高まります。

 

参考までにOSSでのシステム構成例を示します。

■OSSによるメールシステム構築例


[拡大イメージ]

■OSSによる3層Webシステム構築例


[拡大イメージ]

  • OSSの特長 - 経済性

    OSSは、商用ソフトウェアにあるライセンス費用は不要のため、一般にクライアント数やCPU数による追加ライセンス費用も発生しないという特長があります。
    このため、特に初期投資コストの低減に主眼をおいたシステムの場合には、積極的な検討に値する候補となり得ます。また、開発費用の低減やシステムのメンテナンスの面も含めたTCO的な観点でも優位とする調査結果も多数が報告されています。また、運用・保守フェーズにおいても、複数のベンダからの提案が受けられるため、競争原理の働いた幅広い選択肢を持つことが可能となります。

    OSSの経済性についての参考資料としては、日本OSS推進フォーラム ビジネス推進WGがまとめた「OSSのTCOガイド」などがあげられます。
    http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/business/download/oss_tcoguide.pdf

  • OSSの特長 - オープンスタンダード(ベンダ非依存)

    OSSは、ソースコードが公開されており、また利用の自由が保証されていることから、同一のソフトウェアをベースとしたシステムを複数のベンダが提案することができます。このため、システム構築や更改、保守における業者選定にあたって、特定ベンダに縛られないシステム構築が可能です。

    また、OSSは、全世界の多くの個人および組織によって開発されるとともに、先進技術や標準技術の採用に積極的であり、インターフェースにおいても標準化されたシステムの構築が可能です。このため将来にわたっての特定ベンダへの依存を防止することが可能で、複数業者からの選定を長期的に担保できます。例えば、保守フェーズを切り離して、構築フェーズとは別のベンダに委託することも可能です。

    OSS全体の開発体制やサポート体制についての背景を理解するのに役立つ参考資料としては、日本OSS推進フォーラム サポートインフラWGがまとめた「OSSが開発コミュニティからユーザに届くまでの仕組み」が挙げられます。
    http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/support/download/oss_guide.pdf

  • OSSの特長 - 信頼性

    OSSは、当初、インターネット系のアプリケーションを中心に普及してきましたが、近年、大規模システムへの対応や障害対応などのビジネス向けエンタープライズ機能の実装が進み、商用OSベースのシステムと同等以上の信頼性・スケーラビリティを実現できるようになってきました。実際の導入事例をみても、これまでのWebフロント系での導入に加えて、ミッションクリティカルな大規模なシステムへの導入が増加しています。また、信頼性を裏づける調査データも増えてきました。OSSベースのシステムだからといって、商用ソフトウェアと比べて特に信頼性の面で憂慮する必要はないと考えます。

    市場での実績・評価の高まりを示す調査資料としては、インプレス発行の「LinuxOSS白書2006」 (http://www.impressrd.jp/hakusho/linux2006) があります。この資料では、網羅的にOSS市場の現在の調査データと識者による今後の方向性がまとめられています。
    また、信頼性に関する参考情報としては、日本OSS推進フォーラムによる2005年度「OSS性能・信頼性評価/障害解析ツール開発」の成果があげられます。
    http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/development/index.html

 

トップに戻る

保守条件について

一般にOSSでは、誰も瑕疵(バグ)に対して責任を負わないといわれていますが、メジャーなOSSについては、SIベンダやサポートを専門とする企業が存在し、商用ソフトウェアと同様の有償サポート体制があります。

商用ソフトウェアの場合と同様に、顧客自身が保守能力を蓄積・高めて自ら保守をすることも可能ですが、難しい場合にはベンダと保守契約を締結する必要があります。保守のサービス内容により費用は様々ですが、複数ベンダによる参入が自由なOSSであるからこそ、対象システムの重要度に応じて、最適なサービス内容を選択することが可能です。RFPの中で、当該システム重要度を明記し(稼働率や障害時の復旧時間など)、必要な保守サービス内容を提案するようベンダに要求し、保守契約を締結することにより、商用ソフトウェア以上にさまざまなレベルの保守サービスを受けることができます。

OSSの活用を考慮した場合、保守契約において特に考慮するポイントを紹介します。

  • 保守の範囲

    保守の範囲の明確化は、OSSにおいても有事の際の対応に関わるもので重要です。一例としてSIベンダがOSSであるLinuxをOSとして提案する場合、ハードウェアベンダによる動作保証があり、サポート期間が長く、対応する商用アプリケーションも多い商用ディストリビューションを選択することが一般的です。この場合、OS部分と一部のOSSアプリケーションについては、SIベンダではなく商用ディストリビューションのサポートサービスを適用する場合があります。障害時に誰が一次切り分けを担うのか、その後のエスカレーションプロセス、対応時間帯など、サポート費用見積もりにも大きくかかわってきます。また、各ディストリビューションによって動作保障/性能担保できるミドルウェアやOSSを含むアプリケーションソフトウェアは日々検証結果が更新されているため、サポートサービスの提供者とその範囲も変わってくる可能性があります。利用するアプリケーションにあわせて、提案書に選定理由も含んでもらう形にするとよいでしょう。

  • 不具合時の対処

    特にOSSであるために異なる点はないので、商用ソフトウェアの場合と同様に、対処方法についての提案を含めるよう、RFPに明記すると良いでしょう。

  • バージョンアップ

    OSSは、進化が速く頻繁なアップデートがあるためにエンタープライズ用途に向かないということが言われることもあります。しかし、アップデートサイクルの長いビジネス向けLinuxディストリビューションの出現などにより、現在では、商用ソフトウェアと同等レベルになってきています。

  • パッチの作業内容

    OSSにおいても商用ソフトウェアと同様にすべてのアップデートの適用が必須というわけではありません。この点も、SIベンダ側でのポリシーを確認する意味で提案内容に盛り込むように明記することで対応できます。
    対象ハードウェアの台数やサポート内容によって価格が変動するので、提案時にはサポート対象台数や作業内容(手動、自動のデリバリによるパッチ等)を明記することも商用ソフトウェアと同様です。

  • 保証年数について

    ライフサイクルを明記して、契約の内容・条件を提案に含めるようにRFPに記述する必要があることは、商用ソフトウェアベースのシステムと同様です。

 

トップに戻る

トピック1 )OSSは知的財産権の問題がある?

RFPにおける契約事項では、発注・検収形態や機密保持・著作権などの契約に関する要件を記述します。OSSの場合も、知的財産権の課題があるので、これらの課題をお客様とベンダの双方が共通に認識した上で、協力して適切な対応策を取れるようにすることが望まれます。
OSSでは、通常は知的財産権侵害(特許、著作権、商標など)に対する保証がないため、OSSの利用に対して過剰な拒否反応を示す人もいます。しかし、商用ソフトウェアでのケースと同様にOSSのユーザーが訴えられる可能性は極めて低く、OSSのメリットを考えて、積極的に活用を検討すべきです。
尚、法的リスクの詳細に関しては、独立行政法人 情報処理推進機構の『ビジネスユースにおけるOSSの法的リスクに関する調査』 (http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/business/download/oss_risk.pdf) に詳細な分析があり、参考となります。

トップに戻る

トピック2 )OSSを使うと、すべてのソースコードをOSS化しないといけない?

OSSをプラットフォームとして利用し、その上で独自にアプリケーションを開発した場合に、すべてをOSS化しないといけないという誤解を聞くことがあります。OSSは、その採用するライセンスによってはソースコードの改変時に公開を必須とされる場合があります。しかし、OSSをOSやミドルウェアや開発言語を利用しただけでは、新たに開発したアプリケーション自体にソースコードを公開する義務はありません。また、OSS自体を改変してシステムを構築した場合も自社内で利用する分には、公開義務はありませんが、有償・無償問わず外部に配布する場合には、公開する義務が発生する場合があります。

一般にOSSのソースコード自体に手を入れ、これを外部に配布する場合、対象となるOSSのライセンスに従う必要があることに留意をしていれば問題ないでしょう。OSSライセンスに関する詳細については、契約事項の項でも紹介した『ビジネスユースにおけるOSSの法的リスクに関する調査』 (http://www.ipa.go.jp/software/open/forum/business/download/oss_risk.pdf) が参考となります。

トップに戻る