Apple は「オープン」と「統合」を対極に置くが、我々は両方の長所を取り入れる
組込みシステムは、Linux にとって成長著しい市場であるだけでなく、コンピューター市場の中で最も急速成長している分野の 1 つです。そして組込み分野における Linux の成長は、他のあらゆるプラットフォームを凌駕し続けています。
現在、Android、Palm WebOS、Tivo、Sony などのおなじみの製品やソフトウェアは、 Linux を利用しています。しかし、Linux 利用の大半は、マシンツーマシン (M2M) コミュニケーション、航空宇宙・防衛、ネットワークといった従来通りの組込みシステムです。通常、このような製品は、特定のハードウェア製品の上位層で実行するカーネル、X、glibc などのアップストリーム コンポーネントから成る "roll your own (RYO: 自社製)" Linux を使用しています。特にこれらの分野の企業や開発者は、フリー ソフトウェアやビルド システムを手軽に利用することができます。こうした仕組みが正常に機能していることは、マーケットシェアによって明らかに証明されていますが、The Linux Foundation では、業界が協力することによって、製品化にかかるコストやスピードをさらに改善できると考えています。
The Linux Foundation は、組込み分野における Linux の成長を助長するために、新しい試みを開始しています。 その一例が、オープン コンプライアンス プロジェクトです。これを利用することで、家電ベンダーや組込みシステム ベンダーは、フリー & OSS コミュニティの動きを素早く捉え、最小限のコストで確実に法的義務を履行することができます。さて、今日は新しい取り組みが発表されました。これによって、組込みシステム プログラムは大幅に拡張され、家電ベンダーや組込みシステム ベンダーの業務はさらに容易になるでしょう。
まず、私たちは、大手の家電向け Linux 普及機関である Consumer Electronics Linux Forum (CELF) と合併することになりました。CELF は 2003 年に設立され、ソニー、シャープ、パナソニック、サムスン、LG、NEC、日立をはじめとする世界の大手家電デバイス メーカーの支援によって運営されています。CELF との合併により、この成長著しい分野で、より効率的に、業界を超えた協力関係を築くことができるでしょう。 私たちは、家電分野の Linux 利用にとって重要なプロジェクトをサポートするために、CELF の技術プログラム予算を倍増する予定です。また、Linux Foundation のあらゆるイベントにおいて、組込み Linux のコンテンツを増やし、この急成長分野の開発者教育を充実させたいと考えています。組込みシステム向けのパフォーマンス チューニングや、デバイス ドライバーのコースなどのトレーニング プログラムも追加していく予定です。
さらに、組込みシステムで Linux を使用している人々の作業を支援するプログラムも開始します。その名は「Yocto Project (ヨクト プロジェクト)」です。この語をご存じない方のために説明しますと、Yocto とは非常に小さな数値単位を表す単語で、10 の マイナス 24 乗を意味するものです。 この命名は的を射ています。なぜなら Yocto は、ハードウェア アーキテクチャに依存せず、企業が組込み製品向けの小さなカスタム Linux ベース システムを開発するための高品質ツールを提供するオープン ソース プロジェクトだからです。これは、新しいバージョンの Linux でもなければ、「フラグメンテーションを解決する」ための新しい方法でもありません。組込み Linux システムの構築を容易にすることを目的とするツール群です。ですから、このプロジェクトは、こうしたタイプのツール開発の強化や促進を助けると同時に、こうしたツールの利用者による新しい Linux バージョン (特にカスタム ハードウェアを対象とした Linux バージョン) の開発も助長するでしょう。
率直に言いましょう。Steve Jobs と Apple は、ソフトウェアとハードウェアを優雅に融合させることで、すばらしい成果が生まれるということを見せてくれました。 Apple はこれを彼らの「integrated approach (統合的アプローチ)」と呼び、「open approach」を批判するための材料にしています。私たちの対応は、すべての人々が「オープン ソフトウェア」を利用でき、カスタムな「integrated experience (統合的エクスペリエンス)」を速やかに開発できるようなツールによって、Linux コミュニティが両者の長所を生かせるよう支援することです。私には、次の iPhone や画期的な家電機器がどんなものになるのか予測できませんが、コミュニティが協力してツールを開発し、アップストリームのオープン ソース コンポーネントで簡単にデバイスを作れるようになれば、私たちの今日の発表も、Linux も成功するでしょう。



