イベントレポートー日本初開催 LF Energyセミナー：エネルギー業界におけるオープンソース活用の最新トレンド

2025年11月27日、LF Energy セミナーが日本で初めて開催されました。LF Energy の General Member である日立製作所のご協力により、東京駅に直結する Lumada Innovation Hub Tokyo にて実施しました。同会場は、変化し続ける社会課題や環境に向き合いながら DX を推進するための、新たなサービス創出・協創の空間です。

年末の多忙な時期にもかかわらず、エネルギー関連事業に携わる方々をはじめ、オープンソースやクラウドネイティブ技術を活用した DX に関心をお持ちの研究者・技術者が集まり、専門的な学びと交流の機会となりました。

歓迎とオープニング

オープニングでは、Linux Foundation 日本代表の福安徳晃氏が参加者を歓迎しました。業界特化型のOSSプロジェクトは、業界課題の共有・解決、エコシステムの形成、共通技術の共同開発と標準化を促進し、業界全体のトランスフォーメーションを加速させる意義を持ちます。

福安氏は、今回の初開催となる LF Energy セミナーを皮切りに、今後、日本においてもLF Energyメンバーを中心にエネルギー業界の DX を支援するコミュニティを育てていきたいとの意向を示しました。

LF Energy は、オープンソースによってエネルギートランジションを加速させることを目的とした Linux Foundation 傘下のファウンデーションであり、エネルギー分野が直面する共通課題に対し、オープンな技術や標準を共同で開発する中立的な場を提供しています。
今回のセミナーでは、東京ガス、日立製作所、東芝の講師が登壇し、LF Energy をはじめとするオープンソースコミュニティがエネルギー分野の DX をどのように支えているかを紹介しました。また、日本における先進的な取り組みとして、東京ガスの事例も共有されました。

セッションハイライト

「OSSのトレンドと LF Energy」
中村雄一氏 (日立製作所) プレゼン資料
今やビジネスに欠かせなくなったOSSについて、その成り立ちからトレンドを中心に解説し、エンドユーザーの参画が活発なOSSプロジェクトとして、生成AIを支えるクラウドネイティブ技術の中心地であるCNCF (Cloud Native Computing Foundation) やエネルギー業界におけるコラボレーションの場としてのLF Energyの概要を紹介しました。

「LF Energy Deep-Dive」
西島直氏 (日立製作所) プレゼン資料
LF Energyは、信頼性が高く安全でクリーンなエネルギー供給を実現するため、オープンな技術基盤・データ・標準規格の共同開発を通じて、デジタルエネルギー転換を支える国際的なコラボレーションを推進しています。本発表では、その取り組みとエネルギー系統運用のデジタル化に関わるプロジェクトを中心に紹介しました。

「東京ガスグループのクラウド化への挑戦」
杉山祐介氏 (東京ガス)
東京ガスグループは、将来の脱炭素社会の実現とエネルギーの安定供給を目指す「未来をつむぐエネルギー」であり続けるため、クラウド化を積極的に推進してきました。2024年10月には CNCF End User Supporter にも参加し、取り組みをさらに加速させています。今回は、こうした取り組みの一端をご紹介しました。

「持続可能な社会インフラを築くOSS基盤：Civil Infrastructure Platform (CIP)」
小林良岳氏 (東芝) プレゼン資料
社会を支えるシステムには、長期にわたる信頼性とセキュリティが求められます。Civil Infrastructure Platform（CIP）は、産業分野向けに長期活用可能なOSS基盤を提供するオープンソースプロジェクトです。本講演では、CIPの取り組みと成果、さらに東芝における活用事例を通じて、持続可能な社会インフラを支えるOSSの可能性を紹介しました。

交流会

セッション後には交流会が行われ、会場から見える東京駅の素晴らしい景色を背景に、和やかな雰囲気のなかで日本での LF Energy コミュニティ形成への期待と、今後より多くの企業・エンジニアとの協働を広げていきたいという意欲が語られました。エネルギー企業を中心に、分野を超えたネットワーキングが生まれる貴重な機会となりました。