SAP: オープンソース界の隠れたリーディング カンパニー

By 1月 29, 2019 2月 7th, 2019 Blog, Open Source Management

SAPは、オープンソース活動を促進し、オープンソース コミュニティへの関与を深めるため、オープンソース プログラム オフィスを設立しました。

SAPは、数十年に渡ってオープンソースに関わってきましたが、この度、同社のオープンソース活動の調整部門を正式なものにし、オープンソース コミュニティへの関与をさらに深めるため、オープンソース プログラム オフィス (OSPO) を設立しました。「SAPは、オープンソースの使用と貢献のためのプロセスを正式に定義した最初の業界プレーヤーの1つでした」と、オープンソース プログラム オフィスのディレクター Peter Giese 氏は述べています。

それにもかかわらず、まだ多くの人は、SAPがオープンソースに関わり貢献している企業であると認識していません。

「これまで私たちは、当社のオープンソース活動を共有することにあまり熱心でなかったかもしれません」と Giese 氏は述べています。

現在、SAPは、オープンソースへの同社の取り組みに光を当てようとしています。透明性は、新しいオープンソース マンデートの必須の要素です。ここでは、同社がオープンソースに関してこれまで何に取り組んできたか、またどこへ向かっているかについて説明します。

SAPがオープンソース採用に至った経緯

Giese氏によれば、「1998年、SAPは、業界トップのERPシステムであるR/3システムのLinuxへの移植を開始しました。これは、エンタープライズ ソフトウェア市場でLinuxの地位を確立する重要な節目でした。」

システムをLinuxへ移植することは最初の一歩にすぎませんでしたが、成功につながる一歩でした。この行動により、将来、Linuxをどこでどのように採用するかに関して、社内で議論と調査が活発に行われました。

「私たちは、Linuxは強い影響力を持つようになるという結論に達しました」と Giese 氏は言います。「このことは、今では疑う余地がありませんが、当時は、誰の目にも明らかというわけではありませんでした。我々がオープンソースへの取り組みを開始したのは、そのような時でした。」

2001年、SAPは、オープンソースの使用に向けたプロセスを正式に定義し、社内で文書化しました。また、SAPの製品を構築するためにインバウンド オープンソース プロジェクトを使用することとしました。オープンソース ライセンス、セキュリティ、輸出管理規制など、注意を払う必要がある細かい事柄が数多くありました。

2004年にはすでに、SAPは、他社との仕様書の交換に関して情報を持っており、Eclipse Foundation の創設メンバーの1つでした。以後、SAPの開発者達は、JGitEGitMatTychoCheなど、いくつかの Eclipse プロジェクトに積極的に貢献しました。

しかし、SAPがSAP従業員のオープンソースへの貢献を全社的に積極的に推し進めるようになったのは、2008年になってからです。同社がアウトバウンド オープンソース プロセスを公表したのも、この年でした。「SAPチームが成果をオープンソース コミュニティと共有するために何をすべきかについて、ガイドラインと規則を定めました」と Giese 氏は説明しています。

2010年、SAPは、オープンソース ツールの開発プロセスへの統合をさらに推し進めました。「私たちは、標準の開発プロセスの一部として体系的なオープンソース コードスキャンを導入することで、より高いレベルのコンプライアンスを実現しました」とGiese氏は言います。「つまり、ライセンスの遵守とセキュリティの問題に対処するため、オープンソースコードの体系的なスキャンを開始しました。」

2014年、SAPは、CLA assistantというツールをオープンソース コミュニティと共有しました。このツールは、オープンソース コントリビュータのライセンス契約を管理するために開発されました。

以上の活動やプロジェクトは大きな成功を収めましたが、SAP のオープンソース活動をまとめる中心的な調整役の必要性が高まっていました。

「セキュリティ スキャン、ライセンス スキャン、独自のオープンソース ツールの構築など、オープンソースの特定の側面を受け持つ複数のチームがありました。しかしSAPには、オープンソースのすべてに全責任を負う専門の機能や役割はありませんでした」とGiese氏は言います。「今は違います。SAP の最高技術責任者が SAP のオープンソースに対して責任を負っています。」

現在のSAPとオープンソース

新たなオープンソース プログラムオフィス本部は、2018年初めに設立されました。

「私たちは、外部の顧客やパートナー、オープンソース財団、その他オープンソース コミュニティなどとの交流を深め、認知されたいと思っていました。」と Giese 氏は述べています。「それが、昨年 TODO Group に参加して経験の共有、ベスト プラクティスの共同開発、共通のツールでの作業に挑んだ理由です。」

Giese氏の指摘によれば、同社はオープンソースにかなりの投資と貢献を行っているにもかかわらず、その投資や貢献は今でも多くの人に驚きをもって受け止められます。

「たとえば、2018年2月、Adobe の Fil Maj 氏は、GitHub のオープンソース プロジェクトに積極的に貢献している従業員の数をワールドワイドで集計して企業ランキングを公表しましたが、SAPは第7位でした」と Giese 氏は言います。「もちろん、この統計だけですべてを語ることはできません。しかし、これは、SAPがコントリビュータとして役割を果たしていることを示しています。当社は、オープンソース界の隠れたリーディング カンパニーなのかもしれません。」

SAPは、もはや隠れた存在でいることは望んでいません。従来よりも認知されやすい形でオープンソースという場に力を入れようとしています。「Open Source Summit、OSCON、FOSDEM、EclipseCon、KubeConなど、より多くのオープンソース コミュニティのカンファレンスに参加する予定です」と Giese 氏は語ります。SAP が認知度を高めようとしていることは、同社がオープンソースで卓越した存在であり続けようとする印でもあります。同社は、連携を強化し、イノベーションの加速化に拍車をかけようとしています。

最近のSAPの革新的なオープンソース プロジェクトの一例として、Gardener があります。これは、Kubernetes クラスタ向けにサービスを提供するソリューションで、CNCF Cloud Native Landscapeにリストされています。このプロジェクトにより、大量の Kubernetes クラスタの管理とコアアーキテクチャ内の Kubernetes プリミティブの再利用が可能になります。

また、新たにオープンソース化された別の SAP プロジェクトとして、Kyma があります。これは、クラウド ネイティブの世界でエンタープライズ アプリケーションの接続および拡張を柔軟かつ簡単に行う方法を提供します。

SAPは、Gardener、Kymaなどのプロジェクトでの共同開発、共同作業を企業や他の開発者に積極的に働きかけています。

「私にとっては、このような共同のイノベーション活動がオープンソース運動全体で最も魅力を感じる部分です」とGiese 氏は述べています。

SAPオープンソースオフィスの仕事の手法

SAPは、オープンソース プログラム オフィスを、さまざまな分野からの複数のチームで構成される仮想チームとして組織しました。

「私たちはスクラム モードで仕事をしています。これはソフトウェア開発の手法ですが、オープンソース プログラムオフィスを運営する上でもメリットがあります」と、OSPO のチーフ開発アーキテクト Michael Picht 氏は述べています。「スクラムのスプリント内で仕事をするということは、作業をより小さいピースに分割せざるを得ないということです。」

「スクラム手法では機能横断型のチームが力を得ていきますが、OSPO は、まさにそのようなチームです。OSPO には全社から社員が参加しています。そのような環境では、スクラム手法が作業効率を高めます。私たちがスクラム モードで仕事をしていると聞くと、中には奇妙に感じる人もいると思いますが、弊社では非常にうまくいっています。」

Picht 氏は言います。「大きな仕事を小さな部分に分割し、4週間のスプリント内に作業を行うことで、困難で時間のかかる仕事を簡単にやりとげることができます。ただし、すべてのチーム メンバーがこの手法を確実に使いこなせるようにするには、多少のトレーニングが必要です。」

オフィスの使命は、SAP内外で、ソフトウェア開発に対するオープンソース アプローチを育成、サポートすることです。そこで、会社の業務内容から離れて、空き時間にオープンソース プロジェクトに貢献したいと考える従業員のために、SAPは、機密情報取扱許可手続きを大幅に簡素化しました。「いくつかのシンプルなルールを定め、このルールが守られている限りは、空き時間にオープンソースプロジェクトの作業に直接着手できるようにしました」とGiese 氏は述べています。

また、同社は、企業オープンソース貢献プロセスをよりいっそう効率的なものにするために、このプロセスを設計し直そうとしています。開発者を縛るプロセスから脱却し、簡素化されたフォーム、プロセス工程の自動化、サポートチームによるサービスなどを通じて開発者の可能性を引き出すプロセスに移行することを目指します。

オープンソース コミュニティに対する活動としては、オープンソースのベストプラクティスとツールを改善するために、SAPは最近、オープンソース脆弱性評価ツールを提供しました。これは、アプリケーション開発においてソフトウェア開発組織がオープンソース コンポーネントのセキュリティ脆弱性を評価するのを支援するものです。

SAPのオープンソース プログラム オフィスは、これからも、プロセスを高速化し改善する方法を模索し続け、開発者、パートナー、オープンソース コミュニティをサポートし続けるでしょう。

「このことに終わりはなく、ずっと続きます。ですから、私たちは常に、オープンソースのプロセスとツールをさらに改善する新たな方法を見つけたいと思っています。」とPicht 氏は述べています。

謝辞

この事例研究に時間を割いて協力してくださったSAPのオープンソース プログラム オフィスのディレクター Peter Giese 氏、およびチーフ開発アーキテクト Michael Picht 氏に感謝の意を表します。また、オープンソース プログラム オフィスでのインタビューに時間を割いてくださった Pam Baker 氏に感謝いたします。

SAPは、Linux FoundationおよびLinux Foundationプロジェクト(Cloud Foundry FoundationCloud Native Computing Foundation (CNCF)HyperledgerODPiOpenAPI InitiativeTODO Groupなど)のアクティブなメンバーです。